ニデック3段階格下げ、投機的等級に転落の衝撃
はじめに
2026年1月22日、格付け会社ムーディーズ・ジャパンはニデックのシニア無担保債務格付けを3段階引き下げ、投機的等級の「Ba3」にしたと発表しました。「財務諸表の信頼性に対する不透明感が継続し、ガバナンスリスクが投資適格等級に相応しない」ことが理由とされています。
かつて「世界最強のモーターメーカー」と称されたニデックは、不適切会計問題を契機に信用力が急落。創業者の永守重信氏も取締役を辞任する事態となっています。この記事では、ニデックの格下げの背景と今後の見通しを解説します。
格下げの経緯
投資適格から投機的等級へ
ムーディーズによるニデックの格下げは、2025年秋から段階的に進んできました。
2025年10月3日、監査法人PwCジャパンが有価証券報告書の適正性に「意見不表明」としたことを受け、ムーディーズは格下げ方向での見直しを発表。10月29日には発行体格付けを「A3」から「Baa1」に1段階引き下げました。
11月20日にはさらに「Baa3」へ2段階格下げ。そして2026年1月22日、ついに投機的等級の「Ba3」へと3段階引き下げられました。わずか数カ月で、投資適格の上位から投機的等級へと転落したことになります。
格付け見通しも「ネガティブ」
今回の格下げでは、格付けの見通しも「ネガティブ」とされています。これは、さらなる格下げの可能性があることを示唆しています。
ムーディーズは、第三者委員会による調査のスケジュールや結果について不透明な状況が続けば、格付けに「さらなる下方圧力が加わる可能性がある」と警告しています。
不適切会計問題の全容
問題の発端
ニデックの会計問題は、2025年春にイタリア子会社で関税の支払い不備が発覚したことから始まりました。その後、中国のグループ会社での不適切会計の疑い、さらには経営陣が関与した可能性のある資産評価減をめぐる不適切処理の疑いへと広がっていきました。
「1000億円超の減損先送り」疑惑
元ニデック中枢幹部の証言によると、不適切会計の中で「金額ベースで最も大きいのは減損の先送り」とされています。その規模は「1000億円を優に超えている」とされ、減損処理が求められるタイミングで恣意的な判断が働き、巨額の損失が先送りされてきた可能性が指摘されています。
監査意見の連続不表明
監査法人PwCジャパンは、2025年3月期の有価証券報告書と2025年4~9月期の財務諸表について、監査意見を2回連続で不表明としました。さらに、2026年3月期半期報告書についても「レビュー結論を表明しない」と通告。異例の事態が続いています。
永守重信氏の退任
取締役辞任と名誉会長就任
2025年12月19日、ニデックは創業者の永守重信グローバルグループ代表が取締役を辞任したと発表しました。永守氏は非常勤の名誉会長に就任しています。
永守氏は1973年にニデックを創業し、精密小型モーターで世界トップシェアを築き上げたカリスマ経営者です。「一番以外は皆ビリ」などの名言で知られ、日本を代表する起業家として尊敬を集めてきました。
第三者委員会の圧力
日経ビジネスの報道によると、永守氏の辞任の背景には第三者委員会からの圧力があったとされています。不適切会計問題の調査対象は、永守氏をはじめとする現役経営陣だけでなく、歴代の経営陣やグループ幹部にも及んでいます。
特別注意銘柄指定と上場廃止リスク
東証による特別注意銘柄指定
2025年10月28日、東京証券取引所はニデックを「特別注意銘柄」に指定しました。特別注意銘柄に指定された企業は、原則3カ月以内に内部管理体制の改善計画書を提出し、1年後に改善状況の審査を受けなければなりません。
ニデックは2026年1月下旬までに改善計画を日本取引所グループに提出する予定です。
上場廃止の可能性
審査で改善が認められなければ、上場廃止となる可能性があります。専門家からは、この不適切会計問題は「2026年最大級の経済事件に発展する可能性がある」との指摘も出ています。
過去に粉飾決算が問題となったオリンパスや、経営が揺らいで上場廃止となった東芝と同様の危機的状況にあるとの見方もあります。
投資家・市場への影響
社債スプレッドの拡大
ニデックの会計問題は社債市場にも波紋を広げています。格下げに伴い、ニデック債の利回りスプレッド(上乗せ金利)が拡大し、資金調達コストの上昇につながっています。
投機的等級への転落により、機関投資家の中には保有規定に抵触し、売却を余儀なくされるケースも出てくる可能性があります。
業績への影響
不適切会計問題の影響で、ニデックは2026年3月期の通期業績予想を「未定」としています。2025年度第1四半期には多額の営業損失を計上し、業績の先行きは不透明な状況が続いています。
注意点・今後の展望
第三者委員会報告書に注目
今後の焦点は、第三者委員会による調査報告書の内容です。不適切会計の全容が明らかになれば、追加の損失計上や法的リスクが顕在化する可能性があります。
報告書の公表時期も重要です。公表が遅れれば、市場の不信感がさらに高まり、格付けや株価にネガティブな影響を与える可能性があります。
ガバナンス改革の行方
永守氏という創業者カリスマに依存してきた経営体制からの脱却が、ニデック再生の鍵となります。内部管理体制の強化と透明性の向上が、投資家の信頼回復には不可欠です。
まとめ
ニデックのムーディーズによる3段階格下げは、不適切会計問題の深刻さを象徴しています。投機的等級への転落は、かつての優良企業の信用力が急落したことを意味します。
第三者委員会の調査結果、内部管理体制の改善、そして業績の立て直しと、ニデックには多くの課題が山積しています。2026年最大級の経済事件ともいわれるこの問題の行方に、引き続き注目が集まります。
参考資料:
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