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by nicoxz

CFO出身社長が増加中、すかいらーく金谷氏のM&A手腕に注目

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はじめに

近年、日本企業においてCFO(最高財務責任者)出身者が経営トップに就任するケースが増えています。資金調達やIR(投資家向け広報)で培った経験を活かし、社長やCEOとして企業改革の旗を振る人材が注目されています。

その代表例が、すかいらーくホールディングスの金谷実社長です。CFO時代に培った市場との対話力を武器に、2024年10月には九州のご当地うどんチェーン「資さんうどん」を240億円で買収。関東1号店は1日2000人以上が来店する盛況ぶりを見せています。

本記事では、CFOが経営トップへの登竜門となりつつある背景と、金谷社長の手腕について詳しく解説します。

CFO出身社長が増える背景

財務担当から経営参謀へ

かつてのCFOは、決算書を正確に作成する「財務部長」に近い存在でした。しかし現在、その役割は大きく変化しています。東証プライム上場企業でCFOを置く企業は3割を超え、CFOは社長の参謀として成長戦略の策定や株主対応に奔走するようになっています。

株主から資本効率の改善を求める声が強まる中、もはや数字のミスなく決算書を作る従来の経理・財務担当では立ちゆかなくなっています。企業価値を高めるための戦略的思考と実行力が、CFOに求められる時代となったのです。

投資家との対話で磨かれる大局観

CFOが社長への登竜門となる理由の一つが、投資家との対話を通じて培われる大局観です。機関投資家やアナリストとの対話では、自社の強みや課題を客観的に説明する能力が求められます。

多くの日本企業では、株主・投資家との対話を社長が統括し、情報開示責任者としてCFOを任命しています。この過程で、CFOは自社のビジネスモデルや競合環境、成長戦略について深い理解を得ることができます。

エーザイの柳良平専務執行役CFOは「単に会った、話したというレベルにとどまるのではなく、企業価値を高める行動を取るところまで持っていく必要がある」とエンゲージメントの意義を語っています。

欧米では既に主流の流れ

欧米では、財務以外にも営業や管理、システムなど様々な分野で働いていたビジネスマンが、CEOへの足掛かりとしてCFOで力を発揮するケースが多くあります。CFOを経験することで、企業全体を俯瞰する視点と、資本市場からの評価を意識した経営感覚が身につくためです。

日本ではまだ財務畑出身者以外のCFOが多くありませんが、この流れは確実に広がっています。日本CFO協会は、経理財務に携わっていないビジネスマンが将来CFO、そしてCEOとして活躍できるよう教育体系の構築を図っています。

金谷実社長の経歴とすかいらーく再建

野村証券からすかいらーくへ

金谷実氏は1959年生まれ、広島県出身。1981年に一橋大学経済学部を卒業後、野村証券に入社しました。2004年からは投資会社・野村プリンシパル・ファイナンスの執行役員を務めています。

転機となったのは2008年。投資先だったすかいらーくの再建のため、専務取締役として出向することになります。当時、すかいらーくは業績低迷に苦しんでおり、大規模なリストラクチャリングが必要な状況でした。

二人三脚での再生と再上場

金谷氏は谷真代表取締役社長と二人三脚で再生計画を策定。財務面での専門知識を活かしながら、事業構造の改革を推進しました。その結果、2014年には東京証券取引所市場第一部への再上場を実現。投資家との対話を重ねてきた経験が、この成功の基盤となりました。

2023年、金谷氏はすかいらーくホールディングスの代表取締役社長に就任。CFOとして培った市場感覚と財務規律を持ちながら、成長戦略を推進する立場となりました。なお、2026年3月下旬には顧問に就任予定とされています。

資さんうどん買収の戦略と成果

240億円の大型M&A

2024年10月、すかいらーくホールディングスは九州のご当地うどんチェーン「資さんうどん」を240億円で買収しました。資さんうどんは1976年に北九州市で創業し、半世紀近い歴史を持つ老舗チェーンです。買収時点で九州を中心に約70店舗を展開していました。

この買収額は、資さんうどんのEBITDA(営業利益+減価償却費)約14億円の17倍超に相当します。企業買収では一般的に10倍以下が目安とされることから、「高値づかみ」との批判もありました。

「高値づかみ説」への反論

金谷社長はこうした批判に対し、真っ向から反論しています。すかいらーくグループの全国的なインフラと資さんうどんのブランド力を組み合わせることで、買収額以上の価値を生み出せるという確信があるためです。

金谷社長は「3年から5年の数年以内に3倍くらいの200店規模にはできるかな」と店舗展開について語っています。現在の約70店舗から200店舗への拡大を実現すれば、買収額の回収は十分に可能という計算です。

関東1号店の大盛況

その自信を裏付けるのが、関東1号店の成功です。2024年12月にオープンした千葉県の八千代店は、予想を大きく上回る盛況ぶりを見せています。2025年1月末時点で平均日商は200万円以上、1日当たりの客数は2000人以上を記録しています。

金谷社長は「想定以上の売り上げで、正直驚いている。2025年は足固めの年だが、2026年以降は年間40〜50店舗の展開ができるのではないか」とコメント。2025年2月24日には東京1号店「資さんうどん両国店」もオープンし、首都圏での認知度向上を加速させています。

味を変えない戦略

M&Aでよく問題となるのが、買収後の品質維持です。ファンからは「味は守られるのか」という不安の声も上がりました。これに対し金谷社長は、味やサービスを変えないことを大前提とする姿勢を明確にしています。

「今の味のままで関東でも十分通用する」と確信を持っており、九州で愛されてきた出汁の味をそのまま全国に届ける方針です。さらに、台湾への海外進出も検討していることを明らかにしています。

CFO経験がM&Aに活きる理由

財務デューデリジェンスの眼

CFO経験者がM&Aで強みを発揮する理由の一つが、財務デューデリジェンス(精査)の眼です。買収対象の財務状況を正確に評価し、適正価格を見極める能力は、財務のプロフェッショナルならではのものです。

資さんうどん買収においても、表面的な数字だけでなく、ブランド価値や成長ポテンシャルを総合的に評価した上で、240億円という判断に至ったとみられます。

資金調達と株主への説明責任

大型M&Aには多額の資金調達が必要です。CFO経験者は、銀行との融資交渉や、必要に応じた増資の判断など、資金面でのハンドリングに長けています。同時に、株主に対してM&Aの戦略的意義を説明し、理解を得る能力も重要です。

金谷社長は、野村証券時代から培った投資家との対話力を活かし、買収の意義と成長ストーリーを市場に丁寧に説明してきました。

PMI(統合プロセス)への関与

買収後の統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)も、CFOの専門領域と密接に関連します。財務システムの統合、管理会計の整備、シナジー効果の測定など、数字に基づいた統合管理が求められるためです。

注意点・今後の展望

CFO出身社長の課題

CFO出身者が社長になる際の課題として、現場経験の不足が指摘されることがあります。財務・経理畑出身者は、営業や製造の現場を直接経験していないケースが多いためです。

金谷社長の場合、すかいらーくの再建に長年携わる中で、外食産業の現場についても深い理解を得ています。「数字だけでは見えないことがある」という言葉は、この経験を踏まえたものでしょう。

外食産業のM&A動向

外食産業では、人手不足や原材料費高騰を背景に、M&Aによる規模拡大の動きが加速しています。すかいらーくは従来、ガスト、バーミヤン、ジョナサンなど自前ブランドの育成を中心としてきましたが、資さんうどん買収で方針を転換しました。

金谷社長は「次なるM&A候補」についても言及しており、今後も買収による成長戦略を推進する姿勢を見せています。

まとめ

CFO出身者が経営トップに就任するトレンドは、日本企業においても着実に広がっています。資金調達やIRで培った市場との対話力、財務規律に基づいた経営判断、M&Aにおける価値評価の眼など、CFO経験は経営者に必要な能力を多面的に鍛える機会となっています。

すかいらーくホールディングスの金谷実社長は、その好例と言えます。資さんうどんの240億円買収は「高値づかみ」との批判もありましたが、関東1号店の大盛況は戦略の正しさを証明しつつあります。今後の店舗展開と業績推移が、CFO出身社長の手腕を測る試金石となるでしょう。

参考資料:

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