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by nicoxz

1on1ミーティングを惰性にしない工夫と組織横断活用

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はじめに

「1on1(ワンオンワン)」は、上司と部下が1対1で定期的に行う対話型ミーティングとして、多くの企業で導入が進んでいます。リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、従業員3,000名以上の企業では約76%が導入しており、全体でも約7割の企業が1on1を施策として取り入れています。

しかし一方で、「形式的になっている」「話すことがない」「時間の無駄に感じる」といった声も根強く存在します。導入企業の約6割が「3年以内に導入した」という結果からも、まだ定着途上にある企業が多いことがうかがえます。

本記事では、1on1が形骸化する原因を分析し、惰性に陥らないための工夫や、組織を超えた交流の場として活用する先進的な取り組みを紹介します。

1on1が形骸化する原因と背景

目的の曖昧さが最大の問題

形骸化の最も根本的な原因は、1on1の「目的」が曖昧なまま、実施すること自体が目的化しているケースです。「会社の方針だから」「週に1回やると決まっているから」という理由だけで場を設けても、上司と部下の間で目的意識が共有されていなければ、中身のある対話にはなりません。

1on1の本来の目的は「部下の育成」と「部下のエンゲージメント向上」の2つに大別されます。しかし、この目的が組織全体で共有されていないと、単なる進捗確認や報告の場になってしまい、双方向のコミュニケーションという本質が失われてしまいます。

日常のフィードバック不足

1on1がうまくいかないケースの背景で最も多いのが、「日常におけるフィードバックが機能していないこと」です。普段からコミュニケーションが取れていない上司と部下が、週に1回30分だけ向き合っても、いきなり本音で話し合うことは困難です。

1on1を正しく機能させるためには、大前提として、日々の仕事においてメンバーとの関わりを密にすること、日常的にフィードバックをすることが欠かせません。1on1は、日常のコミュニケーションを補完して、より深い信頼関係を築くための貴重な機会として位置づけるべきです。

上司のスキル不足

1on1を正しく行うためには、コーチングのスキル・知識が不可欠です。多くのマネージャーは、自身がプレイヤーとして優秀だったために抜擢されますが、マネジメントの体系的な教育を受ける機会がないまま、「我流」で手探りのマネジメントを行っているのが実情です。

形だけ真似て実践すると、上司・部下間の関係性をゆがめてしまったり、部下の育成面でかえって有害になってしまったりするケースも出てきます。重要なのは、マネージャー自身が「マネジメントとは何か」「部下の成長をどう支援すべきか」という原理原則を学び、自信を持って実践できるようになることです。

効果的な1on1を実現するための工夫

テーマの明確化と事前準備

1on1の時間を無駄にしないためには、事前にテーマを設定しておくことが重要です。話すテーマは大きく7つに分類できます。

  1. プライベートの相互理解:休日の過ごし方や趣味など、人柄を知る
  2. 心身の健康チェック:業務量や体調、メンタル状況の確認
  3. モチベーションの確認:仕事への意欲や満足度を把握
  4. 業務・組織課題の改善:具体的な問題点と解決策を議論
  5. 目標設定・評価の共有:期待値のすり合わせ
  6. 能力開発・キャリア支援:成長に向けた方向性を探る
  7. 戦略・方針の伝達:会社や部署の方向性を共有

毎回すべてを話す必要はありませんが、その時々の状況に合わせてテーマを選び、事前に議題を共有しておくことで、部下は自分の考えを整理しておくことができ、より活発な議論が期待できます。

「聴く」姿勢を徹底する

1on1の主役はあくまで部下です。上司は「話す」ことよりも「聴く」ことに徹し、会話の比率が「上司2:部下8」になることを目指しましょう。

「Yes」「No」で答えるしかない質問ではなく、自由に答えられる「オープンクエスチョン」を心がけることが重要です。「最近の業務で困っていることはありますか?」「今後どのようなスキルを身につけたいと考えていますか?」といった問いかけが、部下の本音を引き出すきっかけになります。

継続的なフォローアップ

1on1で出た課題や提案は、必ずフォローアップすることが大切です。前回アドバイスした内容は次回の1on1でも振り返り、問題なく実行できたか、どの程度効果が現れたか確認しましょう。実行されないまま放置されると、「話しても意味がない」という諦めにつながり、形骸化の原因になります。

組織を超えた1on1の新しい活用法

指名制1on1の導入

近年、上司と部下の固定的な関係を超えた1on1の取り組みが注目されています。「いつでも、誰とでも、何についてでも、1対1で話し合える」という仕組みを導入する企業が出てきました。

通常は直属の上司とミーティングを行いますが、他部署のマネージャーや、場合によっては社長といったように、あらゆる社内の人物と1on1を設定できるようにすることで、社内人脈の構築や多様な視点からのアドバイスを得る機会が生まれます。

他部署との交流を促進

スペースマーケット社では、週1回30分間の直属上司との面談に加え、月1回の他部署リーダーや社長との面談を実施しています。これにより、目標の再確認と軌道修正ができるようになり、毎回マネージャーから「強み」と「弱み」をフィードバックしてもらえるという効果が得られています。

関係が固定されているメンター制度とは異なり、その時の課題に応じて、適した相手に柔軟に相談できるという点が、組織横断的な1on1の大きなメリットです。タテ・ヨコ・ナナメの関係性を築くことで、組織全体のコミュニケーションが活性化します。

心理的安全性の向上

1on1ミーティングを行うメリットの中でも特に大きいのは「心理的安全性」を醸成することです。心理的安全性とは、ほかのメンバーの反応を懸念することなく、安心して発言できる職場環境のことを指します。

部署を越えた1対1の面談は、直接対話による深い相互理解を促進する効果的な手法です。通常の業務では接点の少ない他部署のメンバーと個別に話す機会を設けることで、お互いの業務内容や課題、考え方を深く知ることができます。

先進企業の取り組み事例

電通デジタルの高頻度1on1

電通デジタルは比較的早いタイミングで1on1ミーティングを導入した企業の一つです。ヤフーの1on1ミーティングを参考に導入し、当時200名ほどの従業員に対して一気に導入したため最初は混乱も起きましたが、試行錯誤を繰り返していくうちに人事施策として定着しました。

クックパッドの「高頻度短時間」型

クックパッドの1on1ミーティングは、「高頻度短時間」「話す内容の自由度が高い」ところが特徴的です。1週間のスケジュールの中に固定枠として15分間のミーティング時間を設けており、仕事以外のプライベートの話や気になる話など、話す内容も自由です。短時間でも頻繁に顔を合わせることで、関係性の維持と問題の早期発見につなげています。

リコージャパンの柔軟な運用

リコージャパンは働き方改革の一環として1on1ミーティングに取り組んでおり、上司と部下の心理的安全性の向上や組織のパフォーマンス向上へ一定の効果があることを実感しています。基本的には月1回の1on1ミーティングを実施するほか、必要に応じて頻度を上げて実施する場合もあるという柔軟な運用が特徴です。

注意点・今後の展望

導入時の注意点

1on1の効果を最大限に引き出すには、企業・組織の状況や社内文化に合わせて適切に導入することが重要です。他社の成功事例をそのまま真似るのではなく、自社の課題や目的に照らし合わせてカスタマイズする姿勢が求められます。

また、実施頻度は週1回または月1回程度が一般的ですが、1回当たりの実施時間を長くするよりも、頻度高く行うことが重要とされています。短時間でも継続的に対話の機会を設けることで、信頼関係が醸成されていきます。

今後の展望

1on1の導入目的として最も多いのは「社員の主体性・自律性の向上」であり、2位は「自律的キャリア形成の支援」となっています。人材の流動化が進む中、社員一人ひとりの成長とエンゲージメント向上は、企業の競争力を左右する重要な経営課題です。

調査結果では、60%以上が「上司と部下のコミュニケーションの機会が増えた」、40%以上が「部下コンディションの把握ができている」「上司と部下が本音で話せる関係になっている」と回答しています。正しく運用すれば、1on1は組織の活性化に大きく貢献する施策となります。

まとめ

1on1ミーティングを惰性にしないためには、目的の明確化、日常的なコミュニケーションの充実、上司のスキル向上、そして継続的なフォローアップが不可欠です。「やらされ感」のある形式的な1on1ではなく、双方にとって価値のある対話の場として位置づけることが重要です。

さらに、組織を超えた1on1の活用により、社内人脈の構築、多様な視点からのフィードバック獲得、心理的安全性の向上といった効果が期待できます。上司と部下の固定的な関係にとどまらず、組織全体のコミュニケーション基盤として1on1を捉え直すことで、その可能性は大きく広がります。

自社の状況に合わせて工夫を重ね、形骸化を防ぎながら継続的に改善していく姿勢が、1on1の効果を最大化する鍵となります。

参考資料:

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