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by nicoxz

キヤノン社長に小川氏、90歳御手洗氏の後継問題に区切り

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はじめに

キヤノンは2026年1月29日、小川一登取締役副社長(67)が社長最高執行責任者(COO)に昇格すると発表しました。3月27日の株主総会後に就任します。御手洗冨士夫会長兼社長最高経営責任者(CEO、90)は社長職から退き、会長CEOに就きます。

キヤノンの社長交代は6年ぶりです。御手洗氏は1995年の社長就任から約30年にわたりキヤノンのトップとして君臨してきました。90歳という年齢もあり、後継者問題は長年の懸案でした。この人事により、ようやく次世代への経営移行が始まります。

新社長・小川一登氏の人物像

海外経験豊富なキャリア

小川一登氏は1981年に早稲田大学を卒業しキヤノンに入社しました。約30年にわたる海外駐在経験を持ち、シンガポール、カナダ、米国の販売子会社の社長を歴任しています。2018年には米州販売統括会社の社長に就任し、専務執行役員などを経て2024年3月から副社長を務めてきました。

この経歴は、かつて米国法人社長として長年現地で経営を指揮した御手洗氏自身のキャリアパスと重なります。御手洗氏は小川氏について「海外での勤務経験が豊かで、全て成功している。次世代に歩みを進める上で最もふさわしい人物だ」と評価しています。

期待される役割

御手洗氏は「会長CEOは会社全体の方針の決定、社長COOは方針の実行責任者だ」と役割分担を説明しています。小川氏には、グローバル市場での事業執行をリードしつつ、御手洗氏から経営全般を段階的に引き継ぐ役割が期待されます。

御手洗冨士夫氏の30年

名経営者としての実績

御手洗氏は1995年、従弟の御手洗肇元社長の急逝を受けて社長に就任しました。就任後はキヤノンを高収益企業に変革し、連結売上高を1.5倍、営業利益を2.6倍に拡大させました。売上高営業利益率は15.5%に達し、米ビジネスウィーク誌の「世界の経営者25人」にも選出されています。

また、2006年から2010年まで日本経済団体連合会(経団連)の会長を務め、財界のリーダーとしても活躍しました。

長期政権と後継者育成の遅れ

しかし、30年にわたるトップ在任には批判もあります。2020年には真栄田雅也社長が健康上の理由で退任した際、後継者が見つからず、御手洗氏が異例の3度目の社長復帰を果たしました。社内からは「社長のなり手がいない」状況が問題視されてきました。

取締役会の高齢化も指摘されています。御手洗氏を筆頭に、田中稔三副社長(84)、本間利夫副社長(76)が上位を占める構図は、グローバル企業としては異例です。

近年の業績課題

キヤノンは2024年12月期にようやく2007年12月期の最高売上高を17年ぶりに更新しました。しかし、純利益は約1,600億円と2007年の最高益の3分の1にとどまっています。さらに、医療機器事業で「のれん代」の減損損失1,651億円を計上し、純利益は前年比39.5%減となりました。

カメラ市場の縮小が続くなか、半導体露光装置や医療機器、監視カメラなど新規事業への転換が進められていますが、収益構造の改革はまだ道半ばです。

注意点・展望

今回の社長交代で注意すべきは、御手洗氏が会長CEOとして引き続き経営の最上位に留まる点です。形式上は社長交代ですが、最終的な意思決定権は依然として御手洗氏にあります。完全な世代交代がいつ実現するかは不透明です。

コーポレートガバナンスの観点からは、90歳のCEOが経営トップに留まる体制に対し、機関投資家から厳しい目が向けられる可能性があります。ただし、2024年の株主総会では御手洗氏の取締役再任に対する賛成率が90%に回復しており、株主の支持は依然として高い水準にあります。

小川新社長には、御手洗氏の後ろ盾のもとで実績を積み、将来的にCEOとしての信任を得ることが求められます。

まとめ

キヤノンの社長に小川一登副社長が昇格し、30年にわたる御手洗長期政権にようやく変化の兆しが見えてきました。海外経験豊富な小川氏のもとで事業執行体制が刷新されますが、御手洗氏は会長CEOとして最高意思決定者の座にとどまります。完全な世代交代への道筋と、収益構造の改革が今後の焦点です。

参考資料:

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