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by nicoxz

キヤノン社長に小川副社長が昇格、御手洗氏は会長CEOへ

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はじめに

キヤノンは2026年1月29日、小川一登取締役副社長(67)が代表取締役社長COO(最高執行責任者)に昇格する人事を発表しました。3月27日の株主総会後に正式に就任します。御手洗冨士夫会長兼社長CEO(90)は代表取締役会長CEOに就き、引き続き経営の最終責任を担います。

御手洗氏が長年にわたり一手に握ってきた経営権限を分離し、次世代への移行を明確にする今回の人事は、キヤノンの長期戦略にとって重要な転換点です。新中期経営計画「Phase VII」のスタートに合わせた体制刷新の意図と、キヤノンの今後の方向性を読み解きます。

新社長・小川一登氏の人物像

海外駐在30年のグローバル人材

小川一登氏は1958年生まれ、1981年にキヤノンに入社しました。キャリアの最大の特徴は、約30年にわたる海外駐在経験です。キヤノンシンガポール社長、キヤノンカナダ社長を歴任し、2014年にはキヤノン(中国)有限公司の執行副社長、2018年には米州販売統括会社キヤノンUSAに赴任しています。

この豊富な海外経験は、売上高の約8割を海外で稼ぐキヤノンにとって極めて重要な資質です。御手洗氏は小川氏について「優れたリーダーシップや豊富な国際経験など、キヤノンの次の歩みに欠かせない資質を備えた人物だ」と評価しています。

グローバル販売戦略推進本部長としての実績

小川氏は副社長としてグローバル販売戦略推進本部長を務めており、各地域の販売体制の効率化と新興国市場の開拓を主導してきました。新中期計画では、成熟市場での販売効率化と新興国での販売力強化が重要テーマとなっており、小川氏の経験が直接活かされる布陣です。

御手洗氏のCEO続投とツートップ体制

90歳のCEOが残る理由

御手洗冨士夫氏は2026年時点で90歳という高齢ですが、会長CEOとして引き続き最高経営責任者の立場に留まります。通常であれば後任に全権を委譲する年齢ですが、2030年までの新中期経営計画「Phase VII」の立ち上げを自ら見届ける意思の表れと見られます。

社長職と会長職を分離し、小川氏にCOOとして日常的な業務執行を委ねつつ、御手洗氏がCEOとして大局的な経営判断を担う「ツートップ体制」となります。これにより、経営の継続性を保ちながら段階的な権限移譲を進める狙いがあります。

長期政権からの移行

御手洗氏は1995年に社長に就任し、途中の退任期間を挟みながらもキヤノンの経営を約30年にわたって主導してきました。カメラ中心の事業構造から、半導体露光装置やメディカル、ネットワークカメラなど多角化を推進した功績は大きいですが、後継者の明確化が長年の課題とされてきました。今回の人事は、その課題に対する具体的な回答です。

キヤノンの成長戦略と新中期計画

Phase VII(2026年〜2030年)

2026年からスタートする新中期経営計画「グローバル優良企業グループ構想Phase VII」は、「生産性革新を断行し新たなる成長を実現する」をスローガンに掲げています。ハードウェアに強みを持つ特長を活かしつつ、ソフトウェア・サービスの売上拡大で収益性を高める方針です。

さらに、宇宙ビジネスへの本格参入も成長戦略に含まれており、従来のイメージングやオフィス機器の枠を超えた事業展開を目指しています。

半導体露光装置:AI需要が追い風

成長の柱のひとつが半導体露光装置です。AI向け半導体の旺盛な需要を背景に、特に後工程向け装置の販売が好調で、2025年度は80台の販売を計画しています。次世代技術であるナノインプリントリソグラフィ装置も、大手半導体メーカーでの評価・検証が進んでおり、将来の収益貢献が期待されます。

メディカル事業の収益改善

メディカル事業では2024年に「メディカル事業革新委員会」を立ち上げ、約130億円の投資を行っています。2025年には約100億円の利益改善が見込まれ、2026年以降も収益性の向上が続く見通しです。

2024年度の実績

2024年度の売上高は過去最高の4兆5,098億円に達しました。2025年度は売上高4兆6,000億円、営業利益4,600億円(前期比64.4%増)と大幅な増益を計画しています。

注意点・展望

権限移譲の実効性

形式上はツートップ体制ですが、CEOとして御手洗氏が経営判断の最終権限を持つ構造に変わりはありません。小川氏がCOOとしてどこまで独自の判断を行えるかは、実際の運営を見なければわからない面があります。御手洗氏が健康上の理由などで急に退く事態に備えた体制が十分かどうかも注視すべき点です。

事業環境のリスク

半導体露光装置はAI需要に支えられていますが、EV関連のパワー半導体向けは投資先送りの傾向が続いています。また、カメラ市場は縮小傾向が長期的に続いており、ネットワークカメラやイメージング全体での成長維持が課題となります。

まとめ

キヤノンの社長交代は、長年の課題だった後継者問題に対する具体的な一歩です。海外駐在30年の小川氏を社長COOに据え、御手洗氏が会長CEOとして見守るツートップ体制で、新中期計画Phase VIIの実行に臨みます。

半導体露光装置やメディカル事業の成長ポテンシャルは大きく、ソフトウェア・サービスへの展開や宇宙ビジネスなど新領域への挑戦も注目されます。90歳のCEOから67歳の新社長への権限移譲がどのように進むかが、今後のキヤノンの経営を占う最大のポイントです。

参考資料:

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