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by nicoxz

2026年は国内EV普及の分水嶺、注目すべき5つのポイント

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はじめに

2025年は自動車業界にとって激動の1年でした。年初から日産自動車とホンダの経営統合構想が破談となり、トランプ米政権はEV推進策の大幅見直しを断行。日本の自動車メーカーを取り巻く環境は大きく変化しました。

そして迎えた2026年。スズキ初の量産EV「eビターラ」の発売、BYDによる日本専用軽EVの投入、日産新型リーフの登場など、新モデルの発売が相次ぎます。世界の中で遅れをとってきた日本のEV普及が、いよいよ加速する分水嶺の年になるかもしれません。

本記事では、2026年の国内EV市場を読み解く5つの注目ポイントを解説します。

注目点1:スズキ初のEV「eビターラ」が市場に投入

399万円から購入可能な戦略価格

2026年1月16日、スズキ初の量産EV「eビターラ」がついに日本で発売されました。価格は399万3000円から492万8000円。CEV補助金(2026年1月1日以降は127万円)を活用すれば、実質272万円台から購入できる計算です。

グレードは49kWhバッテリー搭載の「X」(2WD)と、61kWhバッテリー搭載の「Z」(2WD/4WD)の構成。WLTC航続距離は433〜520kmを確保しており、日常使いから遠出まで対応できるスペックです。

EV専用プラットフォームと電動4WD

eビターラはEV専用プラットフォーム「HEARTECT-e」を採用し、電動4WDシステム「ALLGRIP-e」を搭載しています。「ハイテック&アドベンチャー」をテーマにしたデザインは、都市部での普段使いからアウトドアまで幅広く対応できる世界戦略EVとしての位置づけです。

スズキは「4WD車の設定がある小型SUVのEVはニッチな市場だが、需要はあるという手応えを感じている」とコメントしており、後発ながらも独自のポジションで市場攻略を狙っています。

注目点2:BYDの軽EV参入で競争激化

「ラッコ」が2026年夏に登場予定

中国EVメーカーBYDが、日本専用設計の軽EV「ラッコ」を2026年夏に投入する予定です。日本の軽自動車規格に合わせた専用プラットフォームを開発した「日本専用モデル」であり、開発スタートから約2年というスピード感で市場投入されます。

新車販売の4割を占める軽自動車市場は、海外メーカーにとって「非関税障壁」とされてきました。価格競争力の高いBYDがこの牙城を切り崩す可能性があります。

予想価格は200万円前後か

ラッコの価格は220万円前後と予想されており、国のCEV補助金(30万円程度)を活用すれば200万円以下での購入も期待されています。中国で販売されているコンパクトEV「シーガル」は日本円で150万円〜180万円程度の価格帯であることを考えると、コスト競争力のあるモデルとなりそうです。

日本メーカーの軽EVは日産「サクラ」が255万円から、三菱「eKクロスEV」が293万円からとなっており、BYDがどこまで価格を下げてくるかが注目されます。

注目点3:日産・ホンダ統合破談後の業界再編

統合交渉はなぜ破談に終わったか

2024年3月にEV分野での提携検討を発表した日産とホンダは、同年12月に経営統合の基本合意書を締結。しかし2025年2月、統合交渉は正式に破談となりました。

破談の主な理由として挙げられるのは以下の点です。

企業文化の違い ホンダはこれまでOEMなどの提携をほとんど行ってこなかった企業であり、もともと経営統合には不向きとされていました。

日産の業績悪化 2024年度には6700億円あまりの赤字に陥り、2万人の人員削減を発表。ホンダ側には不安材料となりました。

子会社化への反発 ホンダは日産を完全子会社にする提案も行いましたが、日産は「経営の自主性」にこだわり拒否しました。

協業は継続、再統合の可能性も

経営統合は破談となりましたが、EVやSDV(ソフトウェア定義車両)などでの協業関係は継続するとされています。一方で、鴻海(ホンハイ)がホンダと共同で日産を買収する動きも想定されるなど、業界再編の可能性は残されています。

注目点4:トランプ政権のEV政策が日本市場に波及

EV税額控除の打ち切り

2025年に発足した第2次トランプ政権は、バイデン政権が推進したインフレ抑制法(IRA)に基づくEV支援策を大幅に見直しました。北米産EVを購入した場合に受けられた7500ドルの税額控除は、2025年9月末で打ち切りとなっています。

バイデン政権は2030年に乗用車新車販売の50%を「ゼロエミッション車」とする目標を掲げていましたが、トランプ大統領はこの目標を廃止する大統領令に署名しました。

日本メーカーへの影響

米コンサルティング会社のアリックス・パートナーズは、一連の支援策廃止により、米国の新車販売に占めるEVとPHVの比率は2030年に前政権目標の半分の23%にとどまると予想しています。

トヨタ自動車は米国でのEV生産計画を一部見直し、2車種のうち1車種の生産開始を2年延期。需要環境を踏まえ、人気が高まっているハイブリッド車(HV)の生産を増やす方針です。HVに強みを持つ日系メーカーにとっては追い風となる可能性があります。

関税の影響

トランプ政権は日本に対して「相互関税」として15%、自動車関連にはさらに25%の関税を課しています。輸出に依存する日本の自動車メーカーにとって、関税は大きな懸念材料です。

注目点5:充電インフラ整備の進捗

2030年に30万口が政府目標

日本のEV普及が進まない大きな要因の一つが、充電インフラの不足です。2025年3月時点で全国に整備されているEV用充電器は約6.8万口。政府は2030年までに30万口(うち公共用急速充電器3万口)を整備する目標を掲げています。

2025年度には、EV購入補助金に1100億円、充電インフラ整備に460億円の予算が割り当てられました。

「量」から「質」への課題シフト

これまでは充電器の設置数や空白地域の解消といった「量」の課題に取り組みが進められてきました。しかし最近では「充電の手軽さ」といった「質」に関する課題が顕在化しています。

野村総合研究所の消費者アンケートによると、EVを購入したくない理由として、車両価格やランニングコストの高さに次いで「充電スポットの距離・場所の利便性」と「充電の手軽さ」が挙げられています。

中国や米国では、異なる充電事業者間の相互利用(ローミングサービス)やデータ連携が進み、充電器の検索から決済まで一つのプラットフォームで完結できる体制が整いつつあります。日本でもこうした「質」の向上が求められています。

日本のEV市場の現状

シェアは2〜3%台で推移

2025年11月時点における新車販売に占めるEV・PHEVの比率は約2.9%。2024年のEV販売台数は102,868台で、前年比26.9%減と落ち込みましたが、2025年に入ってからは徐々に回復傾向にあります。

メーカー別では、日産が累計販売台数でトップを走り、2位にはテスラがつけています。ただし2025年11月単月ではトヨタが首位に立ち、国内メーカーの競争も激化しています。

世界との大きなギャップ

世界の電動車販売は2025年10月に主要国でシェア30.4%に達しましたが、日本は2〜3%台にとどまっており、主要国平均とのギャップは依然として大きい状況です。

今後の展望と注意点

新モデル投入が普及を後押しか

2026年はスズキ「eビターラ」、BYD「ラッコ」、日産新型「リーフ」、ホンダ「Honda 0シリーズ」など、幅広いユーザー層に手が届きやすい新型EVの発売が予定されています。車種ラインアップの拡充が市場拡大の起点となる可能性があります。

HV人気は続く

一方で、日本市場ではHVが引き続き高い支持を集めています。価格、航続距離、充電環境といった課題が解消されない限り、EVへの急速な置き換えは進みにくい状況です。

中国メーカーの存在感

BYDをはじめとする中国メーカーの参入拡大も、市場の方向性を左右する要素です。価格競争力で優位に立つ中国勢が、日本メーカーの牙城をどこまで切り崩せるか注目されます。

まとめ

2026年は日本のEV市場にとって分水嶺となる年です。スズキ初のEV「eビターラ」やBYDの軽EV「ラッコ」など、新モデルが相次いで投入され、選択肢が大幅に広がります。

日産・ホンダ統合破談やトランプ政権のEV政策見直しなど、業界を取り巻く環境は不透明ですが、だからこそ各メーカーの戦略と市場の反応から目が離せません。充電インフラの整備状況や補助金の動向も含め、今後の展開を注視していく必要があります。

EV購入を検討している方は、新モデルの発売スケジュールと補助金の条件を確認しながら、自身のライフスタイルに合った選択をしていただければと思います。

参考資料:

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