Jフロントが神戸旧居留地25番館を262億円で取得
はじめに
Jフロントリテイリングの不動産子会社であるJフロント都市開発が、神戸市中央区の複合商業施設「神戸旧居留地25番館」を取得しました。売却元はアクティビア・プロパティーズ投資法人で、譲渡価額は262億5,800万円です。
徒歩5分圏内に大丸神戸店を擁するJフロントグループにとって、この取得はエリア全体の回遊性向上と魅力強化を狙った戦略的な投資といえます。百貨店業界が不動産事業の強化を進めるなか、本件はその象徴的な動きです。
この記事では、25番館の概要や取得の背景、そしてJフロントグループの不動産戦略について解説します。
神戸旧居留地25番館とは
歴史ある立地に建つ複合施設
神戸旧居留地25番館は、かつて名門「オリエンタルホテル」が立っていた場所に2010年に竣工した複合ビルです。阪神・淡路大震災でホテルが倒壊した後、長年駐車場として暫定利用されていましたが、三井不動産がプロジェクトマネジャーとなり、竹中工務店の設計・施工で再開発が実現しました。
建物は地上17階・地下3階のS造(一部SRC造)で、延床面積は約2万2,700平方メートルです。施設名の「25番」は、明治初期の外国人居留地に設定された区画番号に由来しています。神戸の歴史を色濃く反映した立地といえます。
フロア構成とテナント
地下2階が駐車場、地下1階から3階が商業フロア、4階から17階がホテルという構成です。1階には東西の通りを結ぶ約50メートルのコリドール(回廊)が設けられ、街との一体感を生み出しています。
商業フロアにはルイ・ヴィトンの大型旗艦店やバーニーズニューヨーク神戸店(関西初出店時)など、ラグジュアリーブランドが入居しています。ホテル部分は「神戸オリエンタルホテル」として運営されてきましたが、2026年2月1日からは「THE ORIENT(ジ オリエント)」に名称が変更されます。これは商標権の使用許諾契約終了に伴うものです。
Jフロントグループの狙い
大丸神戸店との相乗効果
今回の取得で最も注目すべきは、大丸神戸店との連携です。大丸神戸店は1987年から周辺の店舗開発を継続的に進めており、旧居留地エリアにおけるラグジュアリーブランドの集積に大きく貢献してきました。
25番館は大丸神戸店から徒歩約5分の距離にあり、両施設の間にはすでに高級ブランドの路面店が立ち並んでいます。Jフロントグループが25番館を直接保有することで、テナント構成の最適化やイベント連携など、エリア全体をひとつの「面」として運営する戦略が可能になります。
不動産事業の拡大戦略
Jフロントリテイリングは、百貨店事業に加えて不動産事業を成長の柱と位置づけています。GINZA SIXの運営で知られるように、商業施設の開発・運営ノウハウを蓄積してきました。
今回の取得は、REITからの買収という形態も特徴的です。アクティビア・プロパティーズ投資法人(東急不動産ホールディングスがサポート)が保有していた物件を、262億円超で取得しました。引き渡しは2026年5月から2027年6月まで4回に分けて行われる予定です。
回遊性の向上と体験価値
Jフロントグループは、旧居留地エリアの課題として「回遊性」と「体験価値」の向上を挙げています。百貨店での買い物だけでなく、ホテルでの宿泊や飲食、ウエディングなど多様な体験を組み合わせることで、エリアの滞在時間と消費額を伸ばす狙いがあります。
25番館にはホテル、レストラン、バー、チャペル、宴会場が備わっており、百貨店にはない「滞在型」のサービスを提供できます。これは近年の百貨店業界で重視される「モノからコトへ」の流れとも合致しています。
注意点・展望
不動産市況のリスク
262億円という取得価額は、Jフロントグループにとって大きな投資です。不動産市況の変動や金利上昇の影響を受ける可能性があり、投資回収には長期的な視点が必要です。
百貨店業界の不動産シフト
百貨店各社が不動産事業を強化する動きは業界全体のトレンドです。三越伊勢丹ホールディングスや高島屋も不動産開発に注力しており、競争は激化しています。Jフロントは大丸神戸店という強力な拠点を持つ点で優位性がありますが、エリア全体の価値向上には継続的な投資と運営の工夫が求められます。
神戸エリアの将来性
神戸の旧居留地は、歴史的な街並みとラグジュアリーブランドの集積が共存する独自のエリアです。インバウンド需要の回復も追い風となりえますが、大阪・梅田エリアの再開発との競合も考慮する必要があります。
まとめ
Jフロントリテイリングによる神戸旧居留地25番館の取得は、百貨店事業と不動産事業の融合を象徴する動きです。大丸神戸店との連携を軸に、エリア全体の回遊性と体験価値を高める戦略は、百貨店の新たなビジネスモデルを示唆しています。
今後は、ホテル名称変更後の運営方針やテナントの再編、そしてインバウンド需要の取り込みがどのように進むかが注目ポイントです。262億円の投資がどのようなリターンを生むか、Jフロントグループの不動産戦略の真価が問われることになります。
参考資料:
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