トヨタbZ4Xが国内EV初首位、「プリウス以来の本気」で巻き返し
はじめに
トヨタ自動車の電気自動車(EV)が、日本市場で急速に巻き返しています。新型「bZ4X」の2025年11月の国内販売台数は前年同月比30倍超の1580台に急増し、国内のEV販売でトヨタでは初めて首位に立ちました。
「プリウス以来の本気」—日本経済新聞はトヨタのEV戦略をこう評しています。初代ハイブリッド車プリウスで自動車業界に革命を起こしたトヨタが、EV市場でも本気の巻き返しに乗り出した形です。
本記事では、bZ4Xの大幅改良の内容、販売急増の背景、そしてトヨタのEV戦略について解説します。
bZ4X大幅改良の全貌
航続距離が大幅向上
2025年10月にマイナーチェンジを受けた新型bZ4Xは、従来モデルから大きく進化しました。最も注目されるのは航続距離の向上です。WLTCモードで最大746kmを達成し、従来の約560kmから大幅に延長されました。
電費(電力あたりの走行距離)も9.0km/kWhと軽EVに匹敵する高効率を実現。バッテリー技術と回生ブレーキの改良により、実用的な航続性能が大きく改善されています。
充電時間の短縮
急速充電性能も向上しました。150kW急速充電器を利用すれば、約28分で10%から80%まで充電が可能です。長距離ドライブでの充電待ち時間が大幅に短縮され、EVの利便性が高まりました。
さらに、寒冷地でも安定した充電・走行を可能にする「バッテリープレコンディショニング機能」を新搭載。冬場の航続距離低下という課題にも対応しています。
価格の見直し
価格面でも大きな変更がありました。従来モデルより最大70万円安い設定となり、購入のハードルが下がりました。
さらに、最大130万円のCEV補助金を活用すれば、実質350万円台から購入可能です。これまで「EVは高い」と敬遠していた層にもアプローチできる価格帯となりました。
販売急増の背景
メーカーと販売店の一体的な取り組み
bZ4Xの販売急増の背景には、トヨタ本体と販売店の一体的な普及戦略への転換があります。単に商品性を向上させるだけでなく、販売店向けの商談支援や、営業スタッフのEV知識向上など、販売現場への支援を強化しました。
EVはガソリン車と異なる説明が必要なため、販売スタッフの教育が重要です。トヨタは全国の販売店に対し、充電インフラや補助金制度など、顧客の疑問に答えられる研修を実施しています。
サブスクから一般販売への展開
bZ4Xは2022年5月の発売当初、リース販売のみでした。個人ユーザーにはサブスクリプションサービス「KINTO」を通じた提供が中心で、購入希望者には選択肢が限られていました。
2023年11月から一般販売も開始され、現金一括や残価設定型ローンでの購入も可能に。今回の大幅改良と合わせ、購入のハードルが大きく下がりました。
競合他社の状況
国内EV市場では、日産「リーフ」「サクラ」、テスラ「Model 3」「Model Y」などが先行してきました。トヨタはEVで出遅れ感がありましたが、改良型bZ4Xの投入で一気に巻き返しを図った形です。
11月の国内EV販売首位獲得は、トヨタのEV戦略が軌道に乗りつつあることを示しています。
bZ4Xの技術的特徴
SUBARUとの共同開発
bZ4Xは、トヨタとSUBARUが共同開発したクロスオーバーSUV型のEVです。EV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用し、ショートオーバーハング・ロングホイールベース化による広い室内空間を実現しています。
SUBARUの四輪駆動技術とトヨタの電動化技術を融合させ、走行性能と環境性能の両立を図っています。
ギガキャスト技術の導入
生産面では、テスラが先駆けた「ギガキャスト」技術を導入しています。リヤセクションは従来86個の部品と33の工程で組み合わせていたものを、部品数1、工程数1に大幅削減。剛性向上と生産効率化を同時に実現しました。
トヨタ生産方式(TPS)とギガキャストを組み合わせることで、EVの生産コスト削減に取り組んでいます。
2026年にはワゴンタイプも
2026年春には、ワゴンタイプの「bZ4X Touring」が追加予定です。ファミリー層やアウトドア志向のユーザーなど、より幅広い顧客層への訴求を目指しています。
トヨタのEV戦略
マルチパスウェイ戦略
トヨタは「マルチパスウェイ(複数の道筋)」戦略を掲げ、EVだけでなく、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)など、多様なパワートレインを展開しています。
この戦略は「EVシフトの遅れ」と批判されることもありましたが、地域や用途に応じた最適な選択肢を提供するというトヨタの考え方に基づいています。
EV投資の加速
一方で、トヨタはEVへの投資も加速させています。2030年までにEVラインナップを拡充し、年間350万台のEV販売を目指す計画を掲げています。
bZ4Xはその先駆けとなるモデルであり、今回の国内首位獲得は計画の進捗を示す重要なマイルストーンといえます。
課題と展望
トヨタのEV戦略には課題も残ります。テスラやBYDなど先行メーカーとの競争、充電インフラの整備、そしてバッテリーの調達・コスト管理など、克服すべきハードルは多くあります。
しかし、トヨタが持つ生産技術、品質管理、販売網といった強みを活かせば、EV市場でも存在感を発揮できる可能性があります。「プリウス以来の本気」がどこまで成果を出すか、注目が集まります。
まとめ
トヨタのEV「bZ4X」が、2025年11月の国内販売で初の首位を獲得しました。前年同月比30倍超の1580台という急増は、2025年10月の大幅改良が奏功した形です。
航続距離746km、充電時間の短縮、最大70万円の値下げなど、商品力の向上に加え、販売店との一体的な普及戦略が販売増を支えました。ギガキャスト技術の導入など、生産面でも革新が進んでいます。
「プリウス以来の本気」と評されるトヨタのEV戦略は、まだ始まったばかりです。2026年にはワゴンタイプの追加も予定されており、日本市場でのEV普及にトヨタがどこまで貢献できるか、今後の展開が注目されます。
参考資料:
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