48連勤が合法?連続勤務規制の労基法改正を解説
はじめに
「48日間の連続勤務」が法律上は合法――こう聞いて驚く方も多いのではないでしょうか。現行の労働基準法には「変形休日制」と呼ばれる仕組みがあり、制度の組み合わせ次第で最長48日間の連続勤務が可能になります。過労死や精神疾患のリスクが叫ばれる中、この制度の見直しが大きな焦点となっています。
厚生労働省の労働政策審議会では、14日以上の連続勤務を禁止する方向で議論が進められてきました。約40年ぶりとなる労働基準法の大改正として注目を集めましたが、2025年12月に通常国会への法案提出が見送られるという事態も起きています。
この記事では、なぜ48連勤が合法なのか、改正案の内容、見送りの経緯、そして企業や労働者が今後どう備えるべきかを解説します。
なぜ「48連勤」が合法になるのか
労働基準法第35条の仕組み
労働基準法第35条は、使用者に対して「毎週少なくとも1回の休日」を労働者に与えることを義務づけています。これが原則的なルールです。しかし同条には例外規定があり、「4週間を通じて4日以上の休日」を与える方式(変形休日制)も認められています。
この変形休日制を採用すると、4週間(28日間)のうち4日の休日を確保すれば、残りの24日間は連続して勤務させることが可能です。さらに、2つのサイクルをまたいで休日を配置すると、理論上は最長48日間の連続勤務が成立します。
48連勤が成立する具体的なカラクリ
具体的には、第1サイクル(4週間)の最初の4日間にまとめて休日を付与し、第2サイクル(次の4週間)の最後の4日間に休日を集中させます。こうすると、第1サイクルの5日目から第2サイクルの24日目まで、合計48日間の連続勤務が法律上可能になります。
この仕組みは、建設業や24時間操業の製造業、定休日のない小売業など、週休1日制が困難な業種のために設けられた例外規定です。しかし、制度の想定を超えた運用が問題視されてきました。
安全配慮義務との矛盾
労働契約法第5条は、使用者に「安全配慮義務」を課しています。48日間の連続勤務は休日付与の要件を満たしていても、従業員の心身の健康を著しく損なうリスクがあります。過重労働による健康障害が発生した場合、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われる可能性があります。
つまり、形式的には「合法」であっても、実質的には重大な法的リスクを抱える働かせ方です。
改正案の内容と狙い
14日以上の連続勤務を禁止
厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」がまとめた報告書では、「13日を超える連続勤務をさせてはならない」とする規定の新設が提案されています。現行の「4週4休」の変形休日制は「2週2休」に見直され、事実上14日以上の連続勤務が法律で禁止されることになります。
この改正により、変形休日制を採用している企業でも、最長13日間までしか連続勤務を命じることができなくなります。
勤務間インターバル制度の義務化
連続勤務の規制と並んで、勤務間インターバル制度の義務化も柱の一つです。終業から次の始業までに一定時間の休息を確保する仕組みで、原則11時間のインターバルを求める方向で議論が進んでいます。
EU(欧州連合)では既に「労働時間指令」により11時間以上の勤務間インターバルが義務化されています。日本ではこれまで努力義務にとどまっていましたが、義務化により長時間労働の抑制効果が期待されています。
法定休日の特定義務化
現行法では法定休日を「何曜日」と特定する義務がありません。改正案では、法定休日を就業規則で明確に特定することが求められます。これにより、企業が意図的に休日の配置を操作して長期連続勤務を組むことが難しくなります。
その他の改正ポイント
改正案にはこのほか、特例措置である週44時間制の廃止、「つながらない権利」に関するガイドラインの策定なども含まれています。全体として、約40年ぶりの大規模な見直しとなる予定です。
法案提出見送りの経緯と今後
2025年12月の見送り決定
2025年12月23日、厚生労働省は2026年通常国会への労働基準法改正案の提出を見送る方針を固めました。当初は2026年の通常国会に提出し、2027年以降の施行を目指していましたが、方針転換が行われました。
見送りの背景
見送りの直接的な要因は、高市早苗首相による「労働時間規制の緩和検討」の指示です。成長戦略の観点から労働規制のあり方を再検討するよう求められ、労働者側の保護強化を目指す改正案との方向性にズレが生じました。
労働者側からは規制強化を求める声が上がる一方で、経済界からは企業の柔軟性を確保すべきとの意見もあり、「現状では取りまとめは困難」と判断されたとされています。
衆議院選挙の影響
2026年2月の衆議院総選挙も、法案提出の見送りに影響を与えています。選挙結果によって政権の方針や国会の構成が変わる可能性があり、改正案の行方はさらに不透明な状況です。選挙後の新たな国会で改めて議論が行われる見通しです。
企業と労働者への影響
企業が今から準備すべきこと
法案の提出は見送られましたが、連続勤務規制の導入は時間の問題と見る専門家が多くいます。企業としては以下の対策を早めに検討すべきです。
まず、現行のシフト管理体制の見直しです。変形休日制を採用している企業は、現状で何日間の連続勤務が発生しているかを確認する必要があります。14日以上の連続勤務が常態化している場合、早期の是正が求められます。
次に、勤務間インターバルの確保に向けた体制整備です。11時間のインターバルを確保するには、深夜勤務後の翌日の始業時刻を調整する仕組みが必要になります。勤怠管理システムの更新も検討すべきでしょう。
労働者が知っておくべきこと
現行法のもとでも、過度な連続勤務に対しては労働基準監督署への相談が可能です。また、連続勤務によって体調を崩した場合、使用者の安全配慮義務違反を問える可能性があります。
労働組合や社内の相談窓口を活用し、過重な勤務スケジュールについて声を上げることが重要です。
注意点・展望
よくある誤解
「週休2日制なら問題ない」と考えがちですが、法定休日は「毎週1日」が原則であり、週休2日のうち法定休日に当たるのは1日だけです。残りの1日は「法定外休日」であり、法的な保護の度合いが異なります。
また、改正案が見送られたからといって、現行法のまま長期間の連続勤務を命じることが安全というわけではありません。過労死認定基準(時間外労働が月80時間超)に抵触するリスクは依然として存在します。
今後の見通し
法案提出の見送りは「断念」ではなく「延期」と位置づけられています。連続勤務の規制強化は労使双方からの要請があり、政治的な状況が落ち着けば改めて国会に提出される可能性が高いと見られています。
EUなど海外の先行事例を踏まえると、日本でも勤務間インターバルの義務化や連続勤務の上限規制は避けられない流れです。企業は法改正を待つのではなく、自主的に労務管理の改善に取り組むことが求められます。
まとめ
現行の労働基準法では、変形休日制の活用により最長48日間の連続勤務が合法的に成立するという制度上の課題があります。厚生労働省の研究会は14日以上の連続勤務を禁止する改正案をまとめましたが、2026年通常国会への提出は見送られました。
しかし、連続勤務規制の導入は中長期的には避けられない方向です。企業はシフト管理や勤務間インターバルの確保に向けた準備を、今のうちから進めておくべきでしょう。労働者も、自身の権利を正しく理解し、過重労働に対して適切に声を上げることが大切です。
働き方改革の次のステージとして、連続勤務の上限規制は引き続き注目すべきテーマです。
参考資料:
- 2026年労働基準法改正で”14日連続勤務”がNGに!企業が直面するリスクとは? - Panasonic Chronowis
- 2026年の労働基準法の改正は見送り?施行時期や議論中のテーマを解説 - ジンジャー
- 労働基準法改正で14日以上連続勤務が違法に!?副業・割増賃金も見直しへ - 東海総合社労士
- 14日以上の連続勤務禁止へ。48連勤を許容してきた現行制度からの構造転換 - プラットワークス
- 連続勤務の上限日数は何日まで?労働基準法や36協定との関係 - ラクラス
- 48連勤は違法?労働基準法に基づき分かりやすく解説! - マネーフォワード
- 連続勤務は何日まで可能?上限の12日や法律上違反になる場合も解説 - ジンジャー
- 2026年労働基準法40年ぶり大改正|7つの主要改正ポイントと企業への影響
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