ITサービス業界がAIで激変、就活生が知るべき業界の今
はじめに
ITサービス業界は、企業や社会のITシステムを支える「縁の下の力持ち」として、日本経済の根幹を担っています。銀行システム、工場の生産管理、店舗の在庫管理など、私たちの生活を支えるあらゆるシステムの開発・運用を手がけているのがこの業界です。
しかし今、ITサービス業界は大きな転換期を迎えています。生成AIの急速な普及により、システム開発の手法や求められる人材像が変化しつつあります。2026年は「AIで稼ぐ企業」と「AIがコストであり続ける企業」が明確に分かれる年になるとも言われています。
本記事では、ITサービス業界の仕組みと主要企業、そしてAI時代における変革と今後の展望について解説します。就活を控えた学生の皆さんにとって、業界研究の一助となれば幸いです。
ITサービス業界とは
システムインテグレーションの役割
ITサービス業界の中核を担うのが、システムインテグレーター(SIer)と呼ばれる企業群です。システムインテグレーション(SI)とは、社会に必要不可欠なあらゆる「しくみ」をITを使って構築することを指します。
SIerの仕事は、お客様の業務課題を把握し、解決のためのコンサルティングから設計、開発、運用・保守までを一貫して請け負うことです。開発するシステムには、業務システム、基幹システム、Webシステム、モバイルアプリなど多岐にわたります。
社会インフラを支える存在
ITサービス業界は、銀行の決済システムや鉄道の運行管理システム、行政サービスなど、社会インフラの根幹を支えています。こうした大規模プロジェクトに関わることは、エンジニアのキャリアにとって貴重な経験となります。
経済産業省の発表によれば、情報サービス業の売上高は2011年から右肩上がりで、2022年には過去最高の売上高を記録し、16兆円に迫る規模となりました。
主要企業と特徴
SIer大手5社の比較
ITサービス業界の主要企業として、NTTデータグループ、富士通、NEC、日立製作所、日本IBMの5社が挙げられます。各社の特徴を見ていきましょう。
NTTデータグループは日本最大規模のシステム開発会社です。全銀システム(銀行間の決済を担うシステム)の開発元として知られ、多くの社会インフラを手がけてきた実績があります。ハードウェアに依らないマルチベンダーとしての柔軟性が強みです。
富士通は国内外に大きな影響力を持つ日本の総合電機メーカーです。ハードウェアからソフトウェアまで幅広い製品・サービスを提供しています。
NECは顔認証技術など独自の技術力を強みに、官民を問わず価値提供を実現しています。
日立製作所は「IT×OT×プロダクト・システム」を武器に、製造業向けのソリューションに強みを持っています。
日本IBMは多様性を大切にする外資系企業で、ソフトウェア以外の分野にも注力しています。
SIerの分類
SIerは成り立ちによって大きく4つに分類されます。
外資系は、IBMやアクセンチュアなど世界のSIマーケットでも上位に位置する大手企業群です。
国内メーカー系は、富士通やNECなど、コンピューターメーカーやそのグループ関連企業です。
国内ユーザー系は、NTTデータや野村総合研究所(NRI)など、大企業の社内向け情報システム部門が分社独立した企業群です。
独立系は、特定の企業系列に属さず、システムインテグレーション事業をビジネスドメインとして設立された企業群です。
AIによる業界変革
生成AIがもたらすインパクト
2026年、ITサービス業界は生成AIの本格普及により、大きな変革期を迎えています。ガートナージャパンが発表した2026年の戦略的テクノロジートレンドには「マルチエージェント・システム」が入っており、AIが「ツール」から「同僚」へと進化すると予測されています。
ベインによれば、2028年に向けてAIエージェントが生み出す価値は29%にまで拡大すると予測されています。企業は「デジタル従業員」たるAIエージェントを含めたハイブリッドな労働力を管理する必要に迫られています。
真のDXに向けた課題
日本企業は生成AIなどを活用して、今まで以上にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する必要があります。これは1990年代半ばに始まったIT革命に乗り遅れ、「失われた30年」と呼ばれる経済の大スランプを招いた日本企業にとって必須の取り組みです。
2026年は企業にとっての重要な転換点となる1年と考えられています。少子高齢化の進行により労働力人口の減少が避けられない中、AIを積極的に活用し、業務の高度化と生産性向上を図ることは、企業の競争力を高める上で不可欠です。
クラウドサービスの普及と影響
ITサービス業界の不安要素として、クラウドサービスの普及があります。プラットフォームやインフラ構築をサービス化しているクラウドの普及により、ゼロからのスクラッチ開発の需要が減少しています。
しかし、クラウドとAIを活用した新たなサービス開発へのニーズは高まっており、変化に対応できる企業には大きなビジネスチャンスがあります。
就活に役立つ情報
2026年卒の採用動向
ITサービス大手5社の2026年卒採用計画を見ると、好業績を背景とした旺盛な採用意欲がうかがえます。
最も意欲的なのはNTTデータグループで、2026年卒の採用予定数は900人。2025年卒から100人増やす計画です。同社はここ数年、新卒採用数を毎年1割程度増やしています。
日本IBMも2025年卒比50人増の850人を計画しており、人材獲得競争が激化しています。
年収と働きやすさ
SIer業界の年収ランキングでは、野村総合研究所(NRI)が1位となっています。金融ITソリューション事業に強みを持つ同社は、高い専門性が評価されています。
NTTデータは売上・利益や従業員の規模も大きく、平均年収も800万円と高い水準です。平均年齢が比較的低いため、若手には働きやすい環境と言えます。
求められる能力
ITサービス業界で求められる能力は、AI時代において変化しています。プログラミングスキルだけでなく、AIツールを活用してビジネス課題を解決する能力が重視されるようになっています。
また、お客様の業務を理解し、最適なソリューションを提案するコンサルティング能力も重要です。技術力とビジネス力の両方を備えた人材が求められています。
注意点・今後の展望
企業選びのポイント
ITサービス業界は企業によって強みや社風が大きく異なります。就活では以下の点を確認することをお勧めします。
1つ目は、主要顧客と案件の特徴です。金融系に強いのか、製造業に強いのかなど、企業によって得意分野が異なります。
2つ目は、技術投資の姿勢です。AI・クラウドなど最新技術への取り組み状況を確認しましょう。
3つ目は、キャリアパスの多様性です。技術職だけでなく、コンサルタントやマネジメント職へのキャリアチェンジが可能かどうかも重要です。
AIとの共存がカギ
2026年は「AIで稼ぐ企業」と「AIがコストであり続ける企業」がはっきり分かれる年になると予測されています。就活生としては、企業がAIをどのように活用し、ビジネスモデルを変革しようとしているかを見極めることが重要です。
AIに仕事を奪われるのではなく、AIを使いこなして価値を生み出す人材が求められています。
まとめ
ITサービス業界は、社会インフラを支える重要な産業であり、生成AIの登場により大きな転換期を迎えています。NTTデータ、富士通、NECなどの大手企業は、AI時代に対応すべく積極的な人材採用と技術投資を進めています。
就活生にとっては、単に技術を学ぶだけでなく、AIを活用してビジネス課題を解決する能力が求められる時代です。業界研究を通じて各社の強みや今後の成長戦略を理解し、自分のキャリアビジョンに合った企業を選ぶことが重要です。
ITサービス業界は、変化の激しい分野ですが、それだけに成長機会も豊富です。日本のデジタル変革を支える人材として、活躍の場を見つけてください。
参考資料:
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