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by nicoxz

鴻海EVバス日本生産で変わる国内市場、普及加速への期待

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はじめに

鴻海(ホンハイ)精密工業と三菱ふそうトラック・バスが2026年後半に合弁会社を設立し、富山市の工場でEVバスの日本生産を開始します。鴻海が開発した大型EVバス「モデルT」と中型EVバス「モデルU」をベースに、日本市場向けの車両を共同開発・生産する計画です。

現在、日本のEVバス市場は中国BYDが約7割のシェアを占めています。鴻海の参入により、国内での選択肢が広がり、EVバス普及に弾みがつく可能性があります。本記事では、鴻海のEVバスの特徴と、日本のEVバス市場の現状・課題について解説します。

鴻海EVバスの製品ラインアップ

モデルT(大型路線バス)

「モデルT」は全長12m、全幅2.5mの大型路線バスです。鴻海子会社の鴻華先進科技(フォックストロン)が開発し、MIH(Mobility in Harmony)プラットフォーム初の商用車として2021年秋にデビューしました。

ベースモデルは400kWhのバッテリーを搭載し、航続距離は400km以上、最高速度は120km/hを実現しています。すでに台湾では高雄、台南、台中、新北などの主要都市で公共交通機関として導入されており、2025年からの増産が決定しています。

都市部や長距離輸送に適した設計で、堅牢な構造と安全性能を備えています。日本では2027年の投入が予定されています。

モデルU(中型マイクロバス)

「モデルU」は2024年10月に発表された中型バスです。全長6,990mm、全幅2,080mm、全高2,650mm、ホイールベース3,995mmというサイズは、日野自動車の「ポンチョ・ロング」とほぼ同寸です。

航続距離は275kmで、6人乗りリムジンから最大21人乗りのマイクロバスまで、さまざまなカスタマイズが可能です。都市部や地方都市のコミュニティバスの電動化需要を取り込む狙いがあります。

こちらも2027年の日本投入が計画されています。

日本市場向けのカスタマイズ

三菱ふそうとの合弁会社では、これらの車両をベースに日本市場に最適化した車両を共同開発します。三菱ふそうのバス製造子会社「三菱ふそうバス製造」(富山市)で生産し、三菱ふそうブランドで販売する方向で調整が進んでいます。

日本のEVバス市場の現状

普及率はわずか0.1%

日本国内のEVバス導入数は、2021年度末時点で約24万台の全国バス保有台数のうち149台にとどまり、普及率は0.1%以下です。日本バス協会は2030年までに累計1万台のEVバス導入を目標に掲げていますが、現状との乖離は大きい状況です。

日本バス協会の清水一郎会長は「EVバスは運行距離が短く大量輸送が可能な大型の路線バスで特に需要が多いとみている。まずは財務基盤が安定している、県庁所在地以上の都市に拠点を構える会社から導入が進むのではないか」と述べています。

BYDが市場を席巻

現在、日本のEVバス市場は中国BYDが約7割のシェアを占めています。BYDは2015年に京都のバス会社に初めてEVバスを納入して以来、着実に販売を伸ばしてきました。

BYDの強みは圧倒的な価格競争力です。小型EVバス「J6」は1,950万円、大型の「K8」でも3,850万円と、国産ディーゼルバスとほぼ同価格で購入できます。一方、国産の大型EVバスは6,000万〜1億円とされ、その差は歴然です。

BYDがこれほど低価格を実現できる理由は、1995年に電池メーカーとして創業した歴史にあります。EVで最もコストがかかるバッテリーを自社生産できるため、大幅なコスト削減が可能です。

国産メーカーの苦境

日本の国産メーカーは、EVバスの選択肢が限られています。いすゞ自動車が「エルガEV」を、日野自動車が「ポンチョEV」を生産していますが、小型EVバスの選択肢はほぼありません。

日野自動車が開発中だった「ポンチョZ EV」は発売が凍結されてしまいました。2023年2月には、BYDからOEM供給を受けた小型EVバスに使用禁止の化学物質(六価クロム)が検出され、発売凍結に至った経緯もあります。

EVバス普及の課題

車両価格の高さ

EVバス普及の最大の障壁は車両価格です。国産大型EVバスは6,000万円以上が主流であり、ディーゼルバスの数倍の価格となっています。地方のバス事業者にとって、この価格差は大きな負担です。

BYDが価格面で優位に立っている現状において、鴻海・三菱ふそう連合がどのような価格設定をするかが注目されます。鴻海はCDMS(受託設計・製造サービス)モデルでコスト競争力を強みとしており、国産メーカーよりも低価格での提供が期待されます。

充電インフラの未整備

EVバスの運行には、営業所への充電設備の設置が不可欠です。しかし、現状では地域の導入目標や充電ステーションの整備方針といった中長期的な計画が不在のまま、散発的に取り組みが進んでいる状況です。

政府は2030年までに15万基の公共充電器の整備を目指していますが、バスやトラック向けの大型車両用充電設備は別途の整備が必要です。事業所専用の充電・充てん設備の整備も課題となっています。

航続距離の制約

日本で普及しているEVバスは、主に蓄電池の容量が小さい短距離走行多頻度充電型です。航続距離が30〜80km程度と短いため、運行ルートが限定される路線バスでの運用に適していますが、長距離路線や郊外路線への導入は困難です。

鴻海のモデルTは航続距離400km以上を実現しており、この課題を克服する可能性があります。

政府の支援策

補助金制度の拡充

国土交通省では「地域交通グリーン化事業」によりEVバス導入費用の一部を補助しています。2023年度には2022年度の10倍以上となる100億円、約500台分の予算を計上しました。

環境省も「商用車等の電動化促進事業」として、タクシー・バスの車両および充電設備の導入に対して補助を行っています。車両の価格低減やイノベーションの加速を図り、CO2排出量削減を目指しています。

電動バス導入ガイドラインの策定

国土交通省は「電動バス導入ガイドライン」を策定し、バス事業者向けの手引きを公開しています。導入の検討から運用開始までの手順、効果評価などをまとめ、事業者の判断材料を提供しています。

鴻海参入がもたらす変化

国内生産による信頼性

鴻海・三菱ふそう連合の最大の強みは、日本国内での生産体制です。BYDは中国で生産した車両を輸入していますが、鴻海は富山市の工場で日本生産を行います。

品質管理やアフターサービスの面で、国内生産のメリットは大きいといえます。また、三菱ふそうのブランドで販売されることで、日本のバス事業者にとって導入のハードルが下がる可能性があります。

価格競争の活性化

鴻海のCDMSモデルは、受託製造によるスケールメリットを活かしたコスト競争力が特徴です。BYDに対抗できる価格設定が実現すれば、EVバス市場全体で価格競争が活性化し、導入コストの低下が期待できます。

サプライチェーンの多様化

中国メーカーへの依存度が高い現状に対し、鴻海の参入はサプライチェーンの多様化につながります。地政学的リスクの観点からも、調達先の分散は重要な意味を持ちます。

まとめ

鴻海と三菱ふそうの合弁会社設立により、日本のEVバス市場に新たな選択肢が生まれます。大型の「モデルT」と中型の「モデルU」を日本で生産し、2027年からの本格展開を計画しています。

BYDが7割を占める現在の市場構造に対し、鴻海はCDMSモデルによるコスト競争力と、日本国内生産による信頼性で挑みます。EVバス普及率が0.1%にとどまる日本市場において、新たな選択肢の登場は普及加速の起爆剤となる可能性があります。

2030年までに1万台の導入を目指す日本バス協会の目標達成に向け、鴻海の参入がどのような影響をもたらすか注目されます。

参考資料:

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