トヨタが挑む新MADE IN JAPAN、外国人依存の現実

by nicoxz

はじめに

トヨタ自動車は国内生産300万台体制を堅持し、2030年代には約20年ぶりとなる国内新工場を愛知県豊田市に建設する計画を進めています。しかし、その生産を支えているのは日本人労働者だけではありません。

トヨタの新工場予定地から北へ5キロメートル、住人の6割が外国人という「保見団地」があります。そこに暮らす人々の多くがトヨタのサプライチェーンで働いており、「日本車4台に1台は外国人製」という現実が浮かび上がっています。

この記事では、トヨタの国内生産戦略と、それを支える外国人労働者の実態について詳しく解説します。

トヨタの国内生産戦略

300万台体制の維持

トヨタは長年、国内生産300万台体制を掲げてきました。グローバル1000万台体制を支える「マザー工場」として日本を位置づけ、モノづくりの基盤を維持するには300万台の生産規模が必要との考えです。

2025年度の世界生産計画では、トヨタおよびレクサスブランド車で約990万台、うち国内生産は330万台を見込んでいます。3年連続で国内生産300万台を超える見通しです。

2026年の世界生産1000万台超

トヨタ自動車は2026年の世界生産台数を1000万台超とする計画を固めました。米国を中心としたハイブリッド車(HV)需要の高まりに応え、1000万台にのるのは2年連続となります。

新工場建設計画

トヨタは2030年代に、愛知県豊田市で新工場を稼働させる計画です。国内では約20年ぶりの新工場建設となります。

この新工場では、組み立て工程などを全自動にする「未来工場3.0」構想が進められています。ロボットやAIを駆使した次世代型の生産システムを目指しています。

外国人労働者が支える生産現場

保見団地の存在

トヨタの新工場予定地から北に5キロメートルの場所に、「保見団地」と呼ばれるマンモス団地があります。約6200人が暮らすこの団地では、住人の約6割が外国人です。

保見団地に住む外国人の多くは、自動車部品会社で働いています。トヨタの直接雇用ではなくても、1次、2次、3次下請け企業で働き、トヨタの供給網を陰で支えています。

日系ブラジル人の役割

愛知県内で外国人労働者が多い都市として、小牧、豊田、豊橋などが挙げられます。特に日系ブラジル人は、労働ビザの関係から比較的就労しやすく、家族で来日して働くケースも多くあります。

1990年の入管法改正で日系人の就労が容易になって以降、自動車産業を支える重要な労働力となってきました。

「日本車4台に1台は外国人製」

トヨタ本体には外国人従業員は少ないものの、サプライチェーン全体で見れば、外国人労働者なしには生産が成り立たない状況です。「日本車4台に1台は外国人製」という表現は、この現実を端的に示しています。

自動車業界の人手不足

深刻化する労働力不足

自動車業界の人手不足は深刻です。日本における少子高齢化の深刻化に加え、若者の車離れも進み、自動車製造や自動車整備士を目指す若者が減少しています。

自動車整備士の平均年齢も上昇しており、今後は引退者が増えていくことも、人材不足に拍車をかけると見込まれています。

特定技能制度の活用

自動車業界で特定技能制度が運用されるようになった背景には、急激に減少している人材を確保し続ける必要性があります。中国人労働者の多くは技能実習生として来日し、自動車関連企業で働いています。

老朽化する工場

日本の車両工場は高度成長期のモータリゼーションに伴って建設されたものが多く、建屋や設備の老朽化も差し迫った課題です。トヨタは1959年操業開始の元町工場や、1966年の高岡工場を抱えています。

国内市場の縮小

販売台数の減少

国内新車販売台数は、バブル景気に沸いた1990年に778万台でピークを迎えました。それ以降縮小傾向をたどり、2024年にはピーク時の4割減となる442万台まで落ち込みました。

この市場縮小の中で、なぜトヨタは国内生産300万台を維持しようとするのでしょうか。

マザー工場としての役割

トヨタにとって日本の工場は、単なる生産拠点ではありません。新技術の開発や人材育成、品質管理のノウハウを蓄積する「マザー工場」としての役割があります。

ここで培われた技術や経験が、世界各地の工場に展開されます。国内生産を縮小すれば、このマザー工場機能が弱体化するリスクがあります。

米国生産車の日本導入

貿易関係への配慮

トヨタ自動車は、米国で生産するカムリ、ハイランダー、タンドラの3車種について、2026年から順次、日本市場への導入を目指しています。

これはトランプ政権下での貿易摩擦への対応策の一つです。「米国製を日本で売る」という形で、より良い日米貿易関係に貢献する狙いがあります。

双方向の生産体制

これまで「日本で作って米国で売る」が主流だった日米間の自動車貿易に、「米国で作って日本で売る」という逆の流れが加わることになります。グローバル化した生産体制の中で、「MADE IN」の意味が変わりつつあります。

外国人政策の転換点

政府の方針転換

政府は2026年1月中にも外国人政策の基本方針を示し、受け入れを厳格にする方向にカジを切る見通しです。

これまでは人手不足の深刻化を背景に「選ばれる国」を目指してきましたが、高市早苗政権は国民の間で不安が高まっているとして、拡大路線にブレーキをかけるとみられています。

製造業への影響

外国人受け入れ政策が厳格化されれば、外国人労働者に依存してきた製造業の生産現場に影響が出る可能性があります。トヨタのサプライチェーンも例外ではありません。

今後の展望

自動化への期待

トヨタが2030年代に稼働予定の新工場では、「未来工場3.0」構想のもと、高度な自動化を目指しています。人手不足を技術で補う戦略です。

しかし、完全自動化には時間とコストがかかります。それまでの間、外国人労働者への依存は続くとみられます。

MADE IN JAPANの再定義

「日本製」とは何を意味するのか。日本の工場で、外国人労働者が作った車は「日本製」なのか。一方で、米国工場で作られた車が日本で売られる時代。

トヨタが挑む「新MADE IN JAPAN」は、こうした問いに対する一つの答えを示す試みといえます。

まとめ

トヨタが国内生産300万台体制を維持する背景には、「マザー工場」としての日本の役割があります。しかし、その生産を支えているのは外国人労働者であり、「日本車4台に1台は外国人製」という現実があります。

人手不足と外国人政策の転換点を迎える中、トヨタは自動化技術による「未来工場」で新たな道を切り開こうとしています。「MADE IN JAPAN」の意味が問い直される時代が来ています。

参考資料:

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