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by nicoxz

YKK定年廃止から3年「青銀共創」の成果と課題

by nicoxz
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はじめに

少子高齢化が加速する日本において、シニア人材の活用は企業経営の重要課題となっています。そうした中、ファスナー大手のYKKグループは2021年4月に定年制度を撤廃し、本人に働く意思がある限り何歳までも就労できる制度を導入しました。制度開始から約5年が経過した現在、同社では「青銀共創」と呼ばれる世代間協業の取り組みが進み、ベテラン社員と若手社員の協働による組織活性化の成果が見え始めています。

本記事では、YKKグループの定年廃止制度の背景と理念、具体的な取り組み事例、そして他企業にとっても参考になる世代間協業のポイントについて解説します。

YKKが定年制度を廃止した背景と理念

経営理念「公正」に基づく決断

YKKグループが定年制度を廃止した根底には、同社の経営理念である「公正」の考え方があります。「年齢、性別、学歴、国籍にとらわれない真に公正な人事を目指す」という方針のもと、定年制度は年齢を理由に一律に退職を求める仕組みであり、この理念に反するとして撤廃が決定されました。

また、人事理念として掲げる「自律と共生」の観点からも、社員が自らのキャリアを主体的に選択できる環境づくりが重要視されています。定年という外部的な区切りではなく、本人の意思と能力に基づいて働き続けられる制度への転換は、この理念を体現するものです。

注目すべきは、この決断が突然のものではなかったという点です。YKKグループでは約9年前から定年廃止の構想が語られており、長い準備期間を経て実現に至りました。制度設計や社内の意識改革に十分な時間をかけたことが、円滑な導入につながったといえるでしょう。

2024年度から65歳超社員が本格的に活躍

制度導入直後は、実際に65歳を超えて勤務する社員はまだ限られていました。しかし2024年度からは初めて65歳以上の社員が本格的に勤務を開始し、制度が実運用のフェーズに入っています。65歳を超えて継続勤務を希望する社員は約半数に上り、豊富な経験やスキルを持つ人材が組織にとどまることで、技術やノウハウの継承が進んでいます。

定年廃止は単なる雇用延長とは異なります。再雇用制度では処遇や役割が大きく変わることが多い一方、YKKの制度では年齢に関係なく能力と意欲に応じた役割を担うことが前提となっています。この違いが、シニア社員のモチベーション維持に大きく貢献しています。

「青銀共創」を支える具体的な取り組み

グローバルで活躍するベテラン社員の事例

定年廃止制度のもとで活躍するベテラン社員の代表的な事例として、生産技術部門の浪指智さん(65歳)の存在が挙げられます。浪指さんは新卒入社後、延べ28年間を海外の生産拠点で過ごし、2015年から2023年にかけては執行役員を務めました。現在は無役の一担当者という立場ですが、世界70カ国・地域に広がるYKKグループの拠点を訪問し、中堅社員への助言や若手の教育を通じて、グローバルサプライチェーンを人材育成面から支えています。

この事例が示すのは、肩書きや役職に依存しない価値の発揮です。浪指さんのように、長年にわたって蓄積された海外事業の知見や人脈は、マニュアル化が難しい暗黙知の塊です。こうした知識を次世代に伝える「橋渡し役」として、シニア社員が果たす役割は極めて大きいといえます。

「キャリア60」研修と世代間理解の促進

YKKグループの建材事業会社であるYKK APでは、定年廃止制度を実効性あるものにするための研修制度を充実させています。その中心が「キャリア60」研修です。これは60歳に到達した社員を対象に実施されるもので、60代以降のキャリアビジョンの策定や、新たな役割への適応を支援する内容となっています。

さらに注目すべきは、60代の部下を持つ上司向けの研修も併せて実施している点です。年上の部下をマネジメントすることに不慣れな管理職に対して、コミュニケーションの取り方や適切な業務のアサインメント方法を学ぶ機会を提供しています。2024年度にはこれらの研修に約440名が参加しており、組織全体で世代間協業への理解を深める取り組みが進んでいます。

こうした双方向の研修は、「青銀共創」を単なるスローガンに終わらせないための重要な仕掛けです。若手・中堅社員とシニア社員が互いの強みを理解し、補い合う関係を構築するうえで、組織的なサポートは欠かせません。

注意点・展望

定年廃止制度の導入には慎重な準備が必要

YKKの事例は多くの企業にとって参考になりますが、定年廃止制度の導入には十分な準備が必要です。人件費の増加、ポスト不足、評価制度の見直しなど、検討すべき課題は多岐にわたります。YKKが9年もの準備期間を経て実現したように、拙速な導入はかえって組織に混乱を招くリスクがあります。

また、すべてのシニア社員が高いパフォーマンスを維持できるわけではありません。健康面の配慮やスキルのアップデート支援など、継続的なフォロー体制の整備が求められます。65歳超の継続勤務希望者が約半数にとどまるという数字は、働き方や処遇に対する不安が残る社員も少なくないことを示唆しています。

「人生100年時代」に向けた社会的インパクト

2025年4月には改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました。YKKの定年廃止はこの法制度を先取りした取り組みであり、今後さらに多くの企業が同様の制度を検討する可能性があります。

世代間協業は、単に人手不足を補うだけでなく、イノベーションの源泉にもなり得ます。若手のデジタルスキルとベテランの業界知識が融合することで、従来にない発想やソリューションが生まれる土壌が整います。YKKの「青銀共創」の取り組みは、日本企業が直面する人口構造の変化に対する一つの解答として、今後ますます注目を集めるでしょう。

まとめ

YKKグループの定年廃止制度は、経営理念「公正」と人事理念「自律と共生」に基づき、年齢にとらわれない人材活用を実現するものです。65歳超のベテラン社員がグローバルな人材育成で活躍する事例や、「キャリア60」研修による世代間理解の促進など、制度を実効的に機能させるための仕組みが整えられています。

定年廃止の導入を検討する企業は、まず自社の理念と照らし合わせたうえで、研修制度の整備や評価体系の見直しといった環境づくりから着手することをおすすめします。「青銀共創」による世代間協業は、人口減少時代における組織活力の維持に向けた有力なアプローチです。

参考資料:

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