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by nicoxz

三菱自動車、岸浦新社長で経営刷新へ―日米課題に二人三脚体制

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はじめに

三菱自動車は2026年1月21日、岸浦恵介執行役員(56)を4月1日付で社長に昇格させる人事を発表しました。社長交代は5年ぶりとなります。現社長の加藤隆雄氏(63)は会長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、岸浦新社長は新設される最高執行責任者(COO)を兼任します。

このタイミングでの経営体制刷新には、トランプ米政権の高関税政策への対応や、日産自動車・ホンダとの協業関係の再構築など、同社が直面する複数の重要課題が背景にあります。本記事では、新体制の狙いと今後の展望について詳しく解説します。

岸浦恵介氏とはどのような人物か

国際経験豊富なキャリア

岸浦恵介氏は1993年に名古屋大学経済学部を卒業後、三菱自動車に入社しました。人事本部やEVビジネス本部、アフターセールス本部など幅広い部門を経験した後、2016年にはミツビシ・モーターズ・ヨーロッパ(オランダ)の社長兼CEOに就任しています。

その後、2024年4月には理事として米州本部長に就任。米国市場の最前線で関税問題などの難局に対応してきました。2025年4月からは執行役員としてコーポレート企画本部長を務め、全社的な経営戦略の立案に携わっています。

欧州と米州での実績

岸浦氏の強みは、欧州と北米という二大市場での経験です。ヨーロッパでの経営トップ経験に加え、米州本部長として関税政策の影響を最も受ける米国市場を担当してきました。この国際経験が、グローバルな課題に直面する三菱自動車の舵取りに活かされることが期待されています。

加藤隆雄現社長の5年間の実績

構造改革の断行

加藤隆雄氏は2019年に代表執行役CEOに就任し、2021年から社長CEOを務めてきました。就任当初からコロナ禍と経営危機という厳しい状況に直面しましたが、「痛みを伴う構造改革」を断行してきました。

550人規模の希望退職を実施するなど固定費の削減を進め、2021年度には黒字転換を達成しています。加藤氏は「やるべきことは明確なので、ひたすらやるだけ」と述べ、一貫して構造改革を推進してきました。

ものづくりに精通した経営者

加藤氏は1984年の入社以来、名古屋製作所工作部次長、同製作所副所長など、一貫して生産畑を歩んできた人物です。ロシアでのプジョー・シトロエンとの合弁工場立ち上げや、インドネシアの生産合弁会社社長として同国の看板車種「エクスパンダー」をヒットさせた実績もあります。

ものづくりと海外生産に精通したこの経験が、会長兼CEOとしての役割でも発揮されることになります。

新体制が直面する3つの重要課題

課題1:トランプ関税への対応

三菱自動車は2015年に米国生産から撤退しており、米国販売は全量輸入に依存しています。このため、トランプ政権の自動車関税の影響を最も強く受ける日本メーカーの一つとなっています。

2026年3月期の連結営業利益は前期比28%減の1000億円となる見通しで、関税の影響だけで通期400億円の減益要因になると見込まれています。日本の自動車大手7社の2025年4〜9月中間決算では、トランプ関税の負担額は合計1兆4000億円に達し、日産、マツダとともに三菱自動車も赤字に転落しました。

同社は米国での値上げや、日産自動車の北米工場での共同生産を検討するなど対応策を模索しています。現在の関税率は15%で安定していますが、今後の政策変更リスクへの備えも必要です。

課題2:日産・ホンダとの協業の行方

日産自動車とホンダは2024年12月に経営統合に向けた基本合意書を締結し、三菱自動車もこの統合への参画を検討していました。3社合計の2023年度グローバル販売は約837万台で、実現すれば世界3位の自動車連合となるはずでした。

しかし、2025年2月にホンダと日産の統合協議は打ち切りとなり、3社の協業覚書も解約されました。現在は2024年8月に締結された戦略的パートナーシップに基づく電動化・知能化分野での連携継続にとどまっています。

一方で、加藤社長は日産・ホンダと3社で米国での車両共同生産を検討していることを明らかにしており、関税対策としての生産面での協力は継続する見通しです。筆頭株主である日産との関係をどう維持・発展させるかは、新体制の重要な課題となります。

課題3:電動化と収益性の両立

自動車業界全体がEV(電気自動車)シフトを進める中、三菱自動車はPHEV(プラグインハイブリッド車)に強みを持っています。加藤社長は「PHVの需要は強い。一気にEVはリスキー」と発言しており、段階的な電動化を志向しています。

しかし、限られた経営資源の中で電動化投資と収益確保を両立させることは容易ではありません。北米市場での販売台数は2026年3月期に18%減の15万3000台を見込む一方、ASEANがけん引して世界全体では4%増の87万8000台を目指しています。地域戦略の最適化も新体制の腕の見せどころとなります。

CEO・COO体制の狙いと展望

二人三脚体制のメリット

今回の人事で特徴的なのは、会長兼CEOと社長兼COOという役割分担です。加藤氏が経営戦略や対外交渉などCEOとしての役割を担い、岸浦氏がCOOとして日々のオペレーションを統括する体制となります。

この二人三脚体制は、複数の難題に同時対応する必要がある現状において合理的な選択といえます。加藤氏の構造改革経験と対外交渉力、岸浦氏の国際経験とオペレーション能力を組み合わせることで、機動的な経営判断が可能になります。

今後注目すべきポイント

新体制が発足する4月以降、以下の点が注目されます。

まず、米国関税政策への具体的な対応策です。日産との共同生産がどの工場で、どの車種から始まるのかが焦点となります。また、値上げの幅やタイミングも市場動向を左右します。

次に、日産・ホンダとの関係の再構築です。経営統合は頓挫しましたが、電動化や知能化での技術協力、生産面での連携など、どのような形で協業を深化させるかが問われます。

まとめ

三菱自動車の岸浦恵介新社長の起用は、トランプ関税への対応や日産・ホンダとの協業など、山積する課題に対応するための経営体制強化といえます。加藤隆雄会長兼CEOとの二人三脚体制で、戦略立案と実行を分担しながら難局を乗り越える狙いがあります。

5年ぶりの社長交代となる今回の人事が、三菱自動車の新たな成長につながるかどうかは、関税問題への対応と、日産を含むアライアンス戦略の成否にかかっています。4月の新体制発足後の動向に注目が集まります。

参考資料:

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